べ、別に対談のためだけに買ったわけじゃないんだからね!『先崎学のすぐわかる現代将棋』

twitter上にて、ゴーヤ(@go_ya)さんから藤井九段の話題が掲載されているという情報をいただき、本日購入。

先崎学のすぐわかる現代将棋 (NHK将棋シリーズ)

先崎学のすぐわかる現代将棋 (NHK将棋シリーズ)

本書はNHK将棋講座テキストでの同名の連載のうち、「ゴキゲン中飛車」「石田流三間飛車」「角交換振り飛車」の三つの振り飛車戦法についてまとめたもの。
自分もこの辺の戦法のことが知りたくて、連載時にはちょくちょくテキストを買っていた。戦法の主な狙い筋、強みや、対抗の仕方がわかりやすく解説されていて、級位者の自分にも勉強になった(ような気がした)ものだ。


ただ、俺は購入の動機が前述の通りなので、購入後すぐ読んだのは巻末の「羽海野チカ×先崎学スペシャル対談。
しかし大人気の将棋(界)漫画『三月のライオン』(白泉社ヤングアニマル』連載)の作者とその監修者(であり本書の著者)の対談がNHKの本で実現とは…やるなNHK。


全体的に、自他共に認めるオタク気質の羽海野先生がしゃべりまくり、先崎先生が聞き手に回る流れ。
それにしても、他の棋士について熱く(ミーハー気分をあえて隠さず)語りまくる羽海野先生に対して、先崎先生は割りと淡白な受け答えだなあという印象。
件の藤井先生の話題になると、トークがヒートアップする羽海野先生に

先崎「藤井さんがそんなにかっこいいっていうのが、僕には信じられない(笑)」

先崎「僕の前では、あまりそういうところを見せない(笑)」

……先崎先生と藤井先生はあまり仲がよろしくないんだろうか、もしかして。

あるいは藤井先生が、一般人であるところの羽海野先生に対して、気を遣って特別にあれこれしただけだ、とか…それはないな。あのユーモア溢れるアレコレは藤井先生のもともと持ってるアレコレだろうと思う。


それはともかく、羽海野先生の見た藤井先生は噂にたがわぬ面白キャラだったようで、自分も読みながら想像してニヤニヤしてしまった。
女流棋士にダジャレを延々言い続けるA級九段。漫画家の取材に応じて写真のポーズ決めまくる元竜王三連覇。……キャラが濃すぎるだろ。そりゃ漫画のキャラにもなるわ。妄想のネタにもなるわ(と、自己弁護完了)


また、ネタ以外の部分でも、藤井ファンにとって興味深い話題があった。
それは、羽海野先生が漫画の展開の都合上、一度穴熊に篭った玉がまた出てくる棋譜を先崎先生にお願いした……というくだり。


攻め駒ならともかく、普通は完成した囲いを自分から崩すのはあまりないと先崎先生は言い、自分もそう思っていたのだけれど、実はつい最近のプロ棋士の対局で、しかも超重要な対局で、まさしく一度穴熊に篭った玉が再び囲いから出てくる将棋があったのだ。


その対局とは、第58期王座戦本戦2回戦第3局、藤井猛九段対久保利明棋王・王将の一戦。


本局は先手藤井の角交換振り飛車から相穴熊に進み、双方慎重を期した展開は自然、手詰まりに気味になっていった。
千日手含みで淡々と囲いの金銀を組み直す後手・久保。
対して、先手の藤井は方針を切り替えた。
すなわち、自ら組んだ穴熊を放棄することにしたのだ。
自陣を組み替え、機動力を与える。玉が穴から這い出す。そして守りの金銀桂香、そして必要に応じて玉すらも投入する覚悟で、後手に攻め込んでいった。


……そしてここからが双方圧巻の指し回しなのだが、以下は『週刊将棋』や『日本経済新聞』の王座戦観戦記を読むべし。ない?バックナンバーを探すべし。ちなみに日経新聞は8月3日あたりから。


ということで、クマった玉がもう一度這い出すことは案外ありうる話であり、しかもこの藤井久保戦の棋譜を見た後だと、むしろなんだかかっこいいような気すらしてくる。
さすが藤井先生。そして久保先生。


えー。
まあ、そんな感じで、その、
実はこの対談だけですでに非常に満足してしまったのだが、もちろん本編のほうもちゃんと読む。これから。これから。


終わる。