どうぶつしょうぎ問答。

記事タイトルのとおり、どうぶつしょうぎに絡めた妄想ネタ。
思いついたときはたいへんノリノリだったんですがね……
書いてみたら「こりゃ黒歴史だな」と即座に自分で認定してしまうような、たいへん痛い何かになってしまいましてね……
まあ気分てそういうものだよね……


が、痛さを自覚して、それでも削除しないのは、
「削除したら負けかなと思っている」
という気持ちだけではなく、やはり今でも
「けっこう面白いんじゃないか?」
と思っている部分があるからだ。
そうだよ。誰得じゃないんだ。俺得なんだよ。自信もてよ俺。役に立たない類の自信だけどよ。


削除しないもう一つの理由として、
先日この記事をtwitterで話題にしてくださった方がいたようで、
それで、つまり、その、
もう削除するにできなくなったといいますか。ええ。はてなスターまでありがとうございます。


……ちなみにここまでの部分、三度目の書き直しです。


以下、本文。

素朴、でもない疑問。

どうぶつしょうぎってさ」
「うん」
「自然界では捕食関係にある動物同士が味方だよね。
 主にライオンさんとそれ以外だけど」
「そうだな」
「これって、なんでかな?
 ライオンさんは他の動物を食べちゃわないのかな?
 他の動物はライオンさんから逃げたりしないのかな?」
「ふむ」
「ま、『そういう遊びだから』って言えばそれまでなんだけど」
「……いや、面白い話題だ」
「そう?」
「うん。面白い。
 ちなみに、お前はどうしてだと思う?」
「そうねえ。たとえば……
 童話なんかでは、いろんな動物が普通に仲良しだったりするよね。『ぐりとぐら』とかさ。
 どうぶつしょうぎもそういう世界観なんじゃないの」
「なついな、ぐりぐら。
 でも、どうぶつしょうぎは戦いの世界だよな。ぜんぜん仲良しじゃない」
「そうだね」
「それと、戦いの構図が謎だな。よく見ると、同種同士が敵」
「で異種同士が味方か。何があったんだw」

仮説のような何か。

「一つずついこうか。まず、『異種同士が味方でいられるのはなぜか』って話から」
「おk」
「じゃあ、まず仮説として、
 《どうぶつしょうぎの世界は『ジャングル大帝』のよーなことになっている》
 としてみる」
「ああ、ライオンさんが森の動物たちのリーダーね。それはわかる」
「もう一つ。
 ジャングル大帝の世界では動物たちに知性がある。とりあえず異種間でもお互い言葉が通じるレベルくらいはある」
「相当だね」
「さて、主人公レオの父パンジャは、ライオンとして森の食物連鎖の頂点に位置する存在だ。
 しかし弱肉強食を否定し、森に住む動物たちが捕食関係なしに共存すべきだという思想を持っている。
 そして仲間の動物たちと協力して、本当にそれを実現してしまうんだ」
「そんなんだったっけ。よく覚えてないんだけど」
「ごめん、実は俺もよく覚えていないw。
 バッタか何かを養殖して肉食獣の食料にしていたような」
「虫は食べていいんだ」
「虫は話通じなかった気がする。だからだと思う」
「『※ただし共存関係は脊椎動物に限る』みたいな。
 しかし、知性ねえ……」
「むしろ、ここがキモじゃないかな。
 俺は、どうぶつしょうぎの世界のどうぶつさんにも、ジャングル大帝の世界と同様に、高い知性があると考える。
 だからこそ、異種同士でありながら、『敵のライオンさんを捕らえる』という一つの目的のために、組織的に行動できるんだ」
「組織的行動なら、知性とか言わなくても、現実の動物が普通にやってない?」
「それはあくまで同種の群れの場合じゃないか?
 種族を超えて連携して行動できる動物は、少ない気がするな。
 今思いつくものは、すべて片方に必ず高い知能を持った種がいる。
 たとえば、人間と犬。人間と馬。人間とイルカ。人間と鷹。人間と人間」
「……まあ、とりあえずそういうことにしよう。このままだと話があさってに飛びそうだから」
「同意してくれてありがとう」

戦いの理由。

「さて、こうして森のどうぶつさんたちは、生態系を自ら改変し、互いに殺しあうことなく暮らせる世界、みんなが幸せになれる世界を手に入れた」
「……という俺らの仮説ね」
「うん。しかし、その平和な時代は、長くは続かなかった。
 そう、“彼ら”があらわれたのだ」
「え、なに、この前フリ」
「まあ続きを聞け。
 知性を得ていたのは自分たちだけではなかった。
 この狭い土地に、同じように異種間で共存するどうぶつさんの集団がいたのだった。
 具体的には、3×4マスの土地に」
「具体的すぎないか」
「ちゃんと公式に沿ったろ」
「そこだけだろ」
「続ける。
 土地に住めるどうぶつの数は限られている。
 このままではどちらかの集団が、土地を出て行かなければならない」
「で、戦いが起こると。
 でも、最初に共存策を選んだ連中なんだから、相手とも共存したいと考えるんじゃないの」
「そうしたいところだが、最初と今とじゃ問題が違う」
「というと?」
「最初の共存で問題だったのは『捕食の関係をどうするか』ということだった。これは代替となる食料を生産することで解決した。
 でも今回の問題は『土地の不足をどうするか』だ。
 土地はちょっとやそっとじゃ増やせないだろ」
「あー。人間ならそこで、土地を縦に増やすんだろうけど」
「そうだな。まあどうぶつさんたちにはそこまでは無理だったと」
「それでやむなく戦いに……って感じ?」
「うん。
 これで、お前の疑問はだいたい解決したんじゃないか」
「うーん。
 ……いや、まだある」
「なんだ」

FA宣言するどうぶつさん。

「持ち駒ルールはどう解釈するよ」
「持ち駒?」
「つまり、『住む土地がないって言ってるのに、追い出すべき敵を味方にして頭数を増やしちゃうのはどうなの?』ってこと」
「なるほど。
 じゃあ、『逆に考えるんだ。こちらから味方にするんじゃない、敵の駒が自分から味方になりに来るんだ』としたらどうだろう」
「もうちょい詳しく頼む」
「さっきの話からいけば、本当はお互い、殺生はしたくないわけだ。
 だから、『たとえ敵でも命ばかりは助けてやろう』ということになる」
「でも、命を助けるといっても、開放したらまた敵陣に戻っちゃうんじゃないの。住むとこないから戦争するわけで」
「そうだな。かといって、捕虜としてタダ飯を食わせる余裕も場所も無い」
「駒台があるじゃん」
「ぐっ。
 い、いや、それを言い始めると、土地問題の話自体が『あぶれた奴らみんな駒台に行けばいいじゃん』で終了してしまう。
 ここは、駒台は臨時の待機場所であると解釈すべきだ」
「おまw そこだけ都合のいい解釈を……
 じゃあ、そういうことにしておこうか」
「ありがとう。
 ……話を戻すと、さっき言ったような条件は相手も同じなわけだ。
 ということは、捕まった敵のどうぶつさんも、こちらの台所事情を見越しているはず」
「かもね」
「で、降参々々と白旗を揚げながら、彼はこんなことを提案してくる。
 『みなさん、うちのライオンさんが強いのはおわかりですよね?
 しかし、もし、わたくしをあなたがたの仲間にしてくだされば、やつめを討ち取るため、粉骨砕身働きましょう』」
「……生々しくなってきたぞ、おい」

戦争は数だよ兄貴ィ!……とはいえ

「しかし、さっきも言ったけど、敵に戻られるのはまずい。
 といって、こちらで無駄飯を食わせることもできない。
 となれば、こちらとしても、この辺が落としどころじゃないか」
「んー。いや、その交渉が常に降伏する側の勝ちだとすると、その調子であちこちで寝返りが起きる気がする」
「そうは言っても、『こいつ捕獲しないとヤバイ』と思われるくらい相手に脅威を与えた駒が言ってる話だからな?
 脅威の無い駒はそもそもスルーだろ。将棋でも人生でも」
「最後の一言が余計なんですが」
「フヒヒ、サーセンwww
 ……真面目な話に戻ると、もし少数で勝てれば戦後の土地の割り当ても広くなるし、どちらにせよがんばるに越したことは無いよ」
「なるほど」
「しかも今回はトライルールがある。最悪、ライオンさん単騎になっても、敵陣の奥までたどり着ければ勝ちだ」
「あー、それなんだけど」
「なに」
「ライオンさんだけは寝返り許されないのは、なんでさ」
「……えー、あー、えー。
 ほら、たぶん、アレじゃないか? バッタ」
「バッタ?」
「バッタの生産量がこの土地ではライオンさん一匹分だとはっきりしてて、そこだけは最初から譲れないライン、とか。
 で、敵陣の奥にあるのはバッタの生産地。だからここを押さえたら勝ち、みたいな?」
「でもライオンさん一匹になったら、敵の動物+敵に寝返りした動物でフルボッコされて終了のような」
「……それは……アレだ ほら
 ライオンさんは敵のバッタ食うとパワーアップして無敵になる……とか……」
「どこからきた電波だよソレ」
「うるせえ。とにかくトライするとバッタ食ってパワーアップしたライオンさんが敵を一網打尽にするの!
 だからトライ側の勝ち! それがトライルールの真実」
「さらっと真実とか言うなよ」

戦い終わって日が暮れて。みたいな。

「これで説明しきったんじゃないか?」
「強引すぎてなにがなんだか。
 ……それにしても、この話だと、勝ったとしても戦後処理が大変だな。
 特に駒得しまくって勝った日には、今度は土地を巡って内戦が起きやしないか」
「そうだな。せっかく戦いに勝利したのに、問題はぜんぜん解決してない」
「ここまでやっといてなんだけど、もうちょっと救いのある設定にできなかったの、俺ら」
「いやあ、恐ろしいなこの世界」
「お前が言うなよって感じなんですが。
 ……恐ろしいといえば、内戦を回避するには間引きするくらいしか思いつかないんだけど」
「それはできないな。『命を大事に』それがどうぶつさんたちのルールだろ。
 それに間引きをするとすれば、ダブってるどうぶつさんたち、つまり、ライオンさん以外の動物が対象になってしまう」
「いや、ライオンさんでもいいじゃない」
「最強の駒なのに? みんなをまとめられるリーダーなのに? バッタの生産は?」
「うーん。というか、バッタの話がさっきから一番納得いってない件」
「バッタはもう許してくれ。ジャングル大帝の話を持ち出した時点でこうなる運命だった」
「持ち出したのもお前だけどな」
「話を戻す。戻させてください。
 敵のライオンさんは追放した。だからライオンさんの替えはいない。
 ライオンさんの立場は安全なんだよ。
 だからこそ、彼は他のどうぶつさんをどうこうできない」
「リーダーなんだから、そこはびしっと」
「じゃあ、もし、彼が土地のためを思って非情の決断をしたとしよう。
 そしてどうぶつさんたちにこのことを宣言したとしよう」
「うん」
「そしたら、
 『ああ、やっぱりあの人は肉食獣だったのね。
 その気になれば私たちを食べて、自分だけ生き延びればいいのだものね。
 私もいつか食べられてしまうのだわ。ああ怖いわ。恐ろしいわ』
 と、他の味方のどうぶつさんたちから思われてしまうわけだが」
「おいおい。
 それって、味方のどうぶつさんたちもちょっと酷くない?
 ライオンさんだって自分の種としての本能を曲げてまで、彼らのために……
 てか、その中には敵のライオンさんを裏切って無理やり味方についたどうぶつさんもいたりするわけだろ?」
「ふふ、そろそろ見えてきたかな?
 どうぶつしょうぎの世界に渦巻く、それぞれのどうぶつさんたちの思惑が……」
「いや、その、……ちょっと疲れた」
「……ごめん、俺も」


休憩後。悩むライオンさん。

「……というわけで、どうぶつしょうぎではどうぶつさんたちの問題は解決しないことが判明した」
「この問題自体がお前のウルトラでっち上げなわけだが。ネタを振るんじゃなかった」
「つきあったお前にも責任はある。まあ聞け。続きがある」
「さっきからそれでゴリ押しされてる気がする」
「繰り返しになるけど、戦うたびに仲間は増えるが、養いきれない。
 といって間引きなんて非人道的なこともできない」
「動物だけどな」
「くると思ったよ。
 とにかく、これでは、いずれみんながこの土地に住むことができなくなる」
「結局、昔の、食って食われる関係に戻るのかなあ」
「戻れるのであればね。
 しかし、それでは我々のあの努力はなんだったのか。
 知性とは所詮神の気まぐれによって与えられた一時の玩具にすぎず、結局は本能という原始的暴力によって木っ端微塵に砕かれるのが運命だというのか?」
「……………………は?」
「ならば、なぜ神は私の中に相反する力を与えた? 私を苦しませるために?
 いや、もしや、そもそも私とは、苦しむために生み出された存在なのか?」
「ちょっと。落ち着いて。あと怖い」
「『否、否である!』と、ライオンさんは思った」
「人の話聞いてないだろ」
「もう少しで終わる。頼む聞け。
 『肉の欲求に屈するのは容易い。
 しかし、この内なる衝動に従うのみでは得られないものを、私は得た。
 どうぶつさんたちとの友情。信頼。絆。愛。
 私がライオンという種の世界の外に手を伸ばして、はじめて得ることができた、かけがえのない宝なのだ。
 それを否定することが、どうして今の私にできようか」
「と、養殖バッタをかじりながら思うわけだライオンさんは」
「ビールのつまみみたいだな。
 そしてライオンさんは閃く。
 『……そうか。外だ!
 私の内になければ、外に求めればよい。
 この土地の外にも、もしかしたら、別の土地があるかもしれないではないか!』」

そして自然にステップアップ。自然に。

「……まあ、もう本格的にさっぱり意味はわからないけど、なんとなく話の流れは読めた」
「言ってみて」
「や、めんどくさい」
「さっきから俺ばっかり話してるしさ」
「……自分から話したがってるんだろ……」
「はーやーくー。言ってー」
「うぜえ……。
 えー……つまり、アレでしょ。
 本将棋の世界に行くんでしょ」
「正解!
 こうしてどうぶつしょうぎから本将棋の世界にステップアップするわけだ。
 おっけーこれで本筋合流」
「………………いやー
 その流れは違う気がするなー」
「長いたびの末、どうぶつさんたちはついに到達した。
 9×9マスの広大な土地。
 そして見た。
 鎧を着、槍を持ち、馬を操る、自分たちにはない特徴をもった“どうぶつさん”たちが戦う姿を」
「あー、本将棋の駒ね。駒の元ネタは宝物の名前とかも混じってるらしいけどね」
「翻訳補足感謝。続ける。
 ここにも平和な大地などなかった。
 しかし、本将棋において展開駆使される戦略や戦術は、どうぶつさんたちに衝撃を与えたはずだ」
「まあそうね。どうぶつさんは戦法とか囲いとかやったことないもんな」
「どうぶつさんたちは思う。
 『土地を得るための戦いとは、かくも過酷なのか?
  そして、認めたくないが、かくも美しいものなのか?』」
「美しさまで感じるの!?」
「規模やルールこそ多少違うとはいえ、同じ将棋時空の住人なんだ。
 将棋自体を知らない一般人に比べて、そういった感性が優れてても不思議じゃないだろ」
「また変な用語作りやがって……」
「で、まあ、なんかいろいろあって、どうぶつさんたちは真の“将棋”の世界に脚を踏み入れていくのだった……!」
「はしょりまくったな今」


「……そろそろネタが尽きてきた件」
「むしろなんでここまで引っ張ったのか」
「すみません」
「最初の森の生態系と本将棋の関係とかどうなってるのさ」
「すみません」



そして伝説へ。嘘です。

「じゃあ、この辺でおひらきかな。もう満足したでしょ。ネタ振りしたのは俺だけど」
「……あの、最後だけダイジェストでやらせて」
「マジですか」
「だめかな」
「………………
 手短にお願いします」
「感謝。
 で、どうぶつさんたちは自分たちのルーツを辿る旅に出るんだよ」
「手短にって言った矢先に長そうだなオイ!!」
「すぐ終わる。聞け。
 長い旅の末、彼らは大局将棋と出会う。
 知ってる?大局将棋
「テレビで見たことあるかも。
 プロ棋士がやってみたら、終わるのに3日くらいかかったっていう」
「それそれ。
 36×36、計1296マスの超巨大盤を使う、史上最大の将棋だ。
 駒は敵味方合わせて804枚。将棋でもお馴染みの駒に加えて、家畜、野獣、魔獣、半人半獣、妖怪、鬼神の類まで駒として使われている」
「『ぼくのかんがえたさいきょうのしょうぎ』か……」
「しかし、彼らの命は、本将棋とは比べ物にならないほど軽い。
 大局将棋でのそれは、たとえるなら、駒という名の砂粒にすぎない。
 彼らが集まってできた砂場の一番奥に、敵の大将が居る。
 この大将の首を取るために、いや、ひと目見るためだけに、前線の駒たちは、前方から押し寄せてくる敵の駒と後方から背を押す味方の駒に挟まれ、磨り潰すように消えていくのだ……」
「取った相手の駒は持ち駒になるんでしょ?」
「いや、持ち駒ルールは無い。ひたすら消耗戦」
「あー……
 でも、それでいいか。持ち駒使ってらんないよね、駒数がこれだけあると」
「そう思うよ。
 しかし、我々は果たして、こうまでして戦わねばならぬのか。
 どうぶつさんたちは恐れおののいた」
「まあ、ある意味地獄を見たのな」
「うん。
 で、どうぶつさんたちは思う。
 我々は、こうなってはいけない。
 しかし、誰かと争うことはこれからもあろう。
 ああ、認めよう。我々の知性は万能ではない。
 だが、諦めることはすまい。
 考え続けよう。探り続けよう。試し続けよう。
 我々は信じている。
 いつか、『我々と共に生きよう』と“彼ら”に語りかける日が来ることを!」
「……」
「……
 ご清聴、ありがとうございました……」
「おつかれさまでした……」




「……あのさ」
「……はい」
「まあ、もう突っ込むのはやめようと思ってはいたんだけど。
 最後に一つ聞いていい?」
「なんでしょ」
「で、養いきれないどうぶつさんたちは結局どうなるのさ」
「……大局将棋の駒の中にこっそり混ぜてきたってことで」
「これは ひどい」
「失礼しました。ちゃんちゃん?」
「オチかよこれ」



ネタ元的な何か

……元ネタと本文で内容が合ってるのは大局将棋くらいだと思います。