第3回大和証券杯ネット将棋最強戦決勝の大盤解説会に行ってきました

タイトル長い。仕方ない。
公式サイトおよび棋譜再現はこちらhttp://www.daiwashogi.net/


エントリ中に登場する方の発言や行動の記述は主に俺のメモと記憶から再構成したものです。
あらかじめご了承ください。
内容について事実と異なる点があればご指摘ください。


…それと、今回の大盤解説の内容はリアルタイムでネット中継の棋譜コメントに反映されています。
そちらを見ていただければ、このエントリを見る必要はあまりありません。
じゃあなんで書くかといえば、面白かったから。




決勝の対局者は木村一基八段と山崎隆之七段。
解説は渡辺明竜王、聞き手は千葉涼子女流三段。
対局開始は14時15分。
大盤解説会は開場13時30分、開会14時。



場所とか

大盤解説会の場所は大和証券株式会社本店のなかにある「大和コンファレンスホール」というところでした。
具体的には東京駅八重洲北口から徒歩1分のところにある「グラントウキョウノースタワー*1」の18階。


八重洲北口の改札をを出て、案内板の通りに大丸の前を通って外に向かおうとすると

もうありました。本当に近い。田舎者の俺ですら迷いようがないくらい近い。
で入り口と思われるところに行ったら看板が。

了解。
正しい入り口。


エレベータで17階まで上り、18階へはエレベータで。
俺が17階に着いたのは開場時刻の13時30分ちょうど。
エレベータを出てすぐのロビーには、同じく開場を待つお客さんがたくさんいました。
そこからスタッフの方に誘導され、18階会場ホール前の受付に2列で待機。
受付では当選メールのプリントアウトを提示するか当選者名を伝え、入館証とパンフレットの入った袋を渡されます。
入館証↓

解説会終了後にスタッフの方が魁秀もとい回収。
そしてパンフレットを入れた袋↓

8月2日の午後4時以降で東京駅周辺でこの袋を持ってる人を見かけたら、まずこの大盤解説会の参加者です。
で、その中身↓

パンフはすべて本棋戦のスポンサーである大和証券さんのアレコレ。
…すみませんウソつきました。右上のオライリー猿のコースターは入ってません…写したかっただけです…


会場大盤側はこんな感じ↓

中央壇上に大盤。その両側に、写真では見切れてますが壁面大画面モニターが二枚。このモニターにはネット中継の盤面が映されていました。
客席後ろの壁にはトーナメント表も↓

会場内の両側ではフリードリンクが提供されていました。たしか冷・温のお茶とコーヒー、お水だったと思います。


大きな企業が提供するだけあって、今更言うのもなんですがキレイで立派な会場でした。
スタッフの方もしっかりされていて、段取りもしっかり、司会進行の台本もばっちり。



開会&長い長いオープニングトーク

14時になり、司会の方から開会の宣言がありました。
対局者紹介のあと、将棋連盟の西村一義専務理事と大和證券グループの植原恵子執行役からそれぞれ挨拶が。
植原さんの挨拶は参加者対局者関係各位への配慮に満ちていて高感度高し。
挨拶の最後に

植原「それと、提供という立場ですので、この場を借りて少しだけ宣伝もさせてください(笑)」

どうぞどうぞ!


そして渡辺竜王と千葉女流三段入場。
司会による紹介のあと、進行は千葉先生にバトンタッチ。
最初にも書きましたが、以下の会話は公式サイトの棋譜コメントにもだいたい載っています。このエントリではメモと記憶を頼りに再現しているだけで、内容は同じです。…たぶん…

千葉「渡辺竜王はネット将棋というと、こちらの大和証券杯とか、ボナンザとかとやってますよね」
渡辺「はいはいはい。
 そう、みんな忘れてますが、前回覇者なんですよ僕」
会場「(笑)」
渡辺「まあ、それもあと2時間くらいですけどね」
会場「(笑)」


前回決勝の話から。

渡辺「この上の階の(別々の)部屋を与えられて、そこで対局してました。
 われわれの控え室みたいな…」
千葉「私たちの控え室って、ここ(大盤解説会場)みたいな、なんて言うんでしょう、シックでモダンなお部屋なんですよ」

だいたい伝わりました。

渡辺「そうそう。で対局室だとそこに、10人くらいは座れると思うんですけど、丸いテーブルがぽつんと置いてあって、その上に対局用のパソコンがあって。
 あと、お茶とお菓子が置いてあります。でも対局始まっちゃうと食べる余裕ないんですよねー」

へえー。

渡辺「この棋戦て第一回から第三回までほとんどメンバー同じなんです。少しだけ変更はありますが。
 第一回の時は正直『この人パソコン使えんのかな?』って人もいましたが、さすがに今はもう慣れたと思います。
 こう、華麗なマウス捌きでね(笑)」
千葉・会場「(笑)」


振り駒の話。
ネット将棋だと振り駒決まるの一瞬ですよねーという話から。

渡辺「ログインして『OK』ボタン押したらもう先後が決まってて、『うわっ後手だ!』みたいな」
千葉「普通の棋戦ですと、振り駒は記録係の方がシャカシャカシャカって駒を振って『と金が三枚出ましたので…』とか言って、…最低でも5分くらいかかりますよね」
渡辺「そう、でその対局が始まるまでの間に『後手かよコンチクショー…』っていう気持ちを鎮めてるんです。
 ところがネットだと『うわっ後手だ!』って驚いてる間にもう対局始まってて(笑)、10秒20秒ってどんどん持ち時間が過ぎてて、焦るんですよ」

なるほど、プロ棋士はあの一連の手順のなかで作戦を考えたり後手かよコンチクショーな気分を処理したりしてたんですね。



と、対局がはじまらないのでトークでつなぐお二人。しかし

渡辺「…ネタがなくなってきたんですが」
千葉「まだはじまりませんね」


そこで両対局者の話に。
山崎七段について。

千葉「山崎七段はこないだ王座戦の挑戦者になられましたね」
渡辺「そうですね。僕も踏み台にされました」
会場「(笑)」
渡辺「大和では木村さんにも踏み台にされまして…
 …2回戦で(木村さんと)戦ったのに、なんで今ここにいるんだろう
会場「(爆笑)」

と言いながら「ずっと自分が優勢だったのに、30秒将棋になって一手だけ悪手を指してそれで負けました」と自分で解説。

渡辺「将棋はずっといい手を指してても、たった一手悪手を指すと負けなんですよ…」

恐ろしいゲームです。


木村八段について。

千葉「木村八段は今回、たしかほとんど後手だった記憶があるんです」
渡辺「や、全部後手ですね。それで全部一手損角換わりでした。
 (自分の棋風に)合ってるんでしょうね。粘着して、受け切るのが。
 相手が攻めてきたら」
千葉「『はいよろこんでー!』

どっかの居酒屋の店員さん風に。



対局開始。っていうかすでに始まってた。

ここでモニターに対局画面が。って

渡辺「あっ、始まってるじゃないですか!!」

13手目(▲7七銀)まで進んでました。先手木村八段。
モニターに映されてなかっただけで、対局は始まっていたようです。
どうやら後手山崎七段の一手損角換わり。

渡辺「ここまでの手順がわからないので(※画面は将棋倶楽部24仕様なので棋譜を遡れない)、推定手順でいきましょう!」

現局面に追いついたところで棋譜到着。推定手順との違いは7六歩か2六歩かだけでした。さすが。


ここから後手は振り飛車に。


対面対局での話。
席を外してるとブツブツ言うのは渡辺、木村。相手が居ても普段からブツブツブツ言うのは山崎。
その山崎先生について

渡辺「正直な人なんですよね」

でも対局中に悲観的な呟きをしといて、

渡辺「後から
 山崎『あそこはいいと思ってた』
 渡辺『おい!!』
 みたいなことがね」

…そういえばどっかの解説で「実は詰めろなんだけど『コレは形作りですよ』ってフリして指すといいですよね」みたいなことを言っていた気がします山崎先生。*2


そして後手には▲6五角と打たれる隙があり、どうしようかなーという局面。

渡辺「じゃあ▲6五角打ったら解説しm(パシ)…打ちました」

このタイミングが絶妙で、会場からまた笑いが。

渡辺「…早いなあ、ちょっと待ってほしいなあ」

早指しだし定跡だし大変だけどがんばれ竜王


この両馬成の▲6五角に対して後手が△7四角と応じ、以下、後手は上がった金で、先手は歩で、それぞれ角を取り合って▲3七銀(23手目)。
この局面で千葉先生が

千葉「あ、なんか懐かしい局面です。
 (大盤解説の)聞き手でこの局面を見たことが…。たしか竜王も…」
渡辺「記憶に無いなあ。間違いじゃないすか?」
千葉「そうですか…?」

真実はこの後。
…の前に、後手の陣形について一言。

千葉「見てると矢倉にしたくなっちゃうんですが」
渡辺「なっちゃいますね。しかしその(入城したい2二の)位置に飛車が居るの、で」
会場「(笑)」
千葉「いったんどいてもらって…」

文章だと伝わりにくいと思いますが、テンポが面白くてぽんぽん笑いが起きます。
笑いが起きたのは、「その位置に飛車が…」で飛車が玉のかわりに入城したかのようで面白かったとかそんな感じ。ああやっぱり伝わらない。まあよい。


そこで気付く竜王

渡辺「そうか、思い出した!
 これ、羽生森内の名人戦じゃないですか!似た形がありましたよ」
会場「(爆笑)」
千葉「だからさっき私が言おうとしたのに」
渡辺「しかも私、現地にいましたよ。思い出した」
千葉「私のこと記憶が悪いって…(´・ω・`)」

千葉先生カワイソス。


さて、後手は飛車どいて入城するか、「新山崎流が出るか(by渡辺)」。

千葉「お二人とも激しい将棋が好きですよね。角交換も激しい将棋で…」
渡辺「激しいですね。二人とも一手損角換わりが好きで、よく指していますね。
 でも一手損角換わりって、別に後手の勝率よくはないんですよ。
 でも木村さんと山崎さんだけはけっこう勝ってて、だからこの二人が一手損角換わりを支えていると言ってもいいですね。
 この二人が指さなくなったら、廃れてしまうかもしれません」

そして本譜は△7二飛(24手目)で飛車が場所をどき、後手は矢倉を目指すことに。


両対局者の相性の話。

渡辺「木村さんの4勝1敗ですが、このくらいなら気にならないです。
 大事なところで勝てばいいんですから」


ふと、先手が手損してないか?と渡辺竜王
数えるの面倒だけどつい数えてしまった悔しいビクンビクンの結果、先手が二手損と判明。
ただ両対局者とも手損気にしないタイプだからあまり関係ないそうです。


盤面進まず。

渡辺「(後手が)考えてるんでムダ話でもしましょうか。ネタ無いんですけd(パチ
 …指しましたね」

△6二銀(28手目)。


五一にいる後手玉は2二まで行くだろう、行きたいが、3手かかるのがなあと渡辺竜王
ところでネット中継の棋譜コメントだと

渡辺 明 > (中略)さすがに玉は4一に行くと思いますが、山崎さんは変わった手というか、目を見張る手が多いですからね
千葉涼子 > 視点が違うというか

とありましたが、現地ではこれに加えて

渡辺「トップ(棋士)の中でも変わってる棋士

という言葉がありました。もちろん「変わってる」は褒め言葉。



受ける木村、引く山崎。

後手が矢倉を目指したあたりで3七が急所だという解説がありましたが、その流れで「3七銀の使い方どうしよう?」という話に。

渡辺「たとえば▲3七銀〜4六銀と上がって▲35歩と突くか、▲46歩〜4七銀〜5六銀とするかですが」
千葉「しかし▲4六歩〜はどっちかっていうと受けの手ですよね」
渡辺「ですね。木村さんとしては、受けに使うほうが棋風ですね」

そして本譜は▲4六歩(29手目)。
棋風ですね。


そこで普段のネット対局の話。
ネット棋戦では、自宅のPCで指してもいいし、将棋会館のPCで指してもいいとのこと。

渡辺「僕は普段は自宅で指s(パチ)…早いんですよちょっと」
会場「(笑)」
渡辺「(話を続ける)自宅の場合はウェブカメラを使って、監視されるんです。本人が指してるか確認するために。将棋会館にいる職員の方に。
 僕の場合は見られてもいいやとTシャツに短パンで指してたりしますけど、
 某先生はスーツで指してたそうです」
千葉「ご自宅でですか(笑)」
渡辺「ご自宅で(笑)。と思えば別の某先生はタンクトップで指していたそうで、スーツ対タンクトップ
千葉・会場「(爆笑)」
渡辺「いかにも『らしいなあ』って感じの先生方なんですけど、ご想像にお任せします。
 …と、将棋会館でウェブカメラ監視してる職員の方が言ってました」


△4二玉(34手目)と上がったところで▲4五歩(35手目)。

渡辺「木村流だなあ」
千葉「桂が飛べなくなりますが…」
渡辺「飛べなくなりますが、これ受けの手です」

ここから木村先生の「受け」の話。

千葉「そういえば木村先生には『千駄ヶ谷の受け師』という呼び名がありますね。すごい名前ですね」
渡辺「そうそう、受けが好きなんですよね。
 でも本人は否定してるんです。僕らから見たらどう見ても受けてるんだけど(笑)。
 本人に言わせれば『攻め駒を攻めてるんだ』っていうんですが
 それって受けてるってことなんじゃないの?って」

木村先生の強弁に爆笑の会場。
しかし将棋は相手の攻め駒を根こそぎ取ってしまえばそれも勝ちなので、

渡辺「まあ、ものは言いようですよ」

というお話。


木村といえば王位戦で木村3三連勝だよね?そういえば竜王も3連敗4連勝だったよね?と話題を振る千葉先生。
対する渡辺竜王のコメント。

渡辺「ああ、そんなこともありましたね。まぐれですね。
 ああいうことは一回きりでしょうけど、そういうことも起きるんですね」

ドライだ…
しかし実際渡辺竜王にとっては(そして挑戦者の羽生名人にとっても)「あんなウルトラしんどい戦い何度もあってたまるか」という気分だとは思います。


先手は▲4八飛(37手目)と寄って伸ばした4五の歩の後ろにつきました。
対して解説では後手の6・7・8筋の駒の使い方に注目していましたが…
本譜は△5二銀(38手目)。

渡辺「ひえー!」
千葉「撤退?」
渡辺「撤退ですね。これ、きっと山崎さんため息つきながら指してますよ」


以下、しばらく攻める先手木村に「形にとらわれない受け(by渡辺)」で対応する後手山崎の図。
▲4三歩成(47手目)の軽妙手に「おー」となる会場。
やむなく△同金左(48手目)。
解説では形が悪いし利かしだと言われていた手ですが

渡辺「山崎さん、どこかでうっかりがあったんだろうか」
千葉「『いやあー』とか言ってますね」

大和証券杯ネット将棋の話とか。

渡辺先生が前回決勝で鈴木大介八段と対局したときの話。
鈴木先生は早見え早指しでも強いことで知られていますが、

渡辺「鈴木さんの持ち時間はまるまる20分近く、自分は30秒ってことがあって、『(鈴木の)持ち時間早くなくなれ、早くなくなれ』って思ってたんですけど全然減らなくて。
 あの時はもうイヤになりましたよ(笑)
 でもようやく30秒同士になって、そうなると楽しみが出てくるというか、元気が出てくるんですね」


大和證券杯といえば、で株の話。

千葉「渡辺先生は前回優勝して株をはじめられたそうで」
渡辺「優勝して株を、というか、羽生さんに勝って大和證券さんで株を買ったんですが、…まあ勝ったといっても時間切れで勝ったんですけどね。
 でも以前木村さんが対局中に使っていた扇子に
 『何で勝っても勝ちは勝ち』
 って書いてあって、おおそうだ、何で勝っても勝ちは勝ちだよなあと」
会場「(笑)」
千葉「非常に実用的な扇子ですね(笑)」

ちょっと欲しいかもです。

渡辺「で、なんの話だっけ」

あるある。

千葉「株を…」
渡辺「そうでした。
 事の発端は女流ネット将棋の大盤解説会で、聞き手にS木カンナさんという方がいまして…」
千葉・会場「(笑)」

そのS木カンナさんが、大和證券さんとの仕事をするので口座を開いて株をやっている…と言ったそうです。

千葉「S木さん立派ですね…」
渡辺「じゃあ僕は羽生さんと対局するので、それに勝ったら(自分も株を)やると約束したんです」
千葉「で勝ったと。
 S木さんはしっかりやってるそうですが、先生はどうですか?」
渡辺「実は売り買いはしてないです。2〜3ヶ月に一回見るくらい。
 でも去年から世界的に…こう…大変になったじゃないですか」
千葉「なりましたね」
渡辺「そうすると見たくないですよ。ものすごい下がってそうじゃないですか…
 でも大変だけど、僕は優勝して大和さんに賞金をいただいているのであまり痛くないです」

将棋で稼ぐのが棋士の本業です、と。
ちなみにその持ち株の現在については

渡辺「評価額40%とか…痛くはない、けど、気分は悪いです」

ぎゃあああ。


ここで将棋の話に復帰。

千葉「形勢はどうでしょうか」
渡辺「素人目に見ても先手がいいです。って僕ら素人じゃないですよ!」
会場「(笑)」

ノリツッコミ。

渡辺「でも他人の将棋はわかりませんよ。リアルタイムで見てないと、解説つきでないとわからないことだってありますし。
 勝負がついた後から見る棋譜なんて、最初に勝敗を知ってるから『どうせ勝ったほうの快勝だろう』なんて思っちゃうんですけど、実際読んでみるとどっちが勝つか最後までわからなかったりしますよ」

プロでもそういうことがあるんですね。
やはり解説付き棋譜はよいものです。自戦記はよいものです。*3


本譜は桂の跳ねあいから先手の2筋突き捨てがあり、▲2三歩の垂らし(53手目)。
なかなか指さない後手。

渡辺「山崎さんは最近妙に考えるようになってきました」
千葉「ええ、どちらかといえば長考派に…」
渡辺「今、関西で強い若手が出てきてますよね。豊島君とか。山崎さんもこういう関西の下の人たちとやってて、得るものが多いんだと思います」

ずっと「関西の若手有望株」と呼ばれ続けてきた山崎先生が、下の世代の台頭で刺激を受けているというお話。
かく言う渡辺先生もそう呼ばれてきた一人ですが…

渡辺「“若手有望株”ってポジションは居心地がいいんですよ(しみじみと)」
会場「(笑)」

下からの突き上げは来ないし、上だけ見ていればいいから、と語る渡辺竜王。っておい竜王が語るのかコレ。正直者め。好き。
しかし最近は上下に挟まれてるのでそう言っていられなくなってきたそうです。


そして考えた末に後手が指した手は△55歩(54手目)。

渡辺「ここは強気に行くべk(パチ)…早いんですよ…(力なく)」

で強気の▲5五同銀(55手目)。
金銀交換のあと▲5五角(59手目)と打ち、解説陣からは先手好調の評価。
△4四銀と打ってもらい▲4六角と引いたところで後手が秒読みに。
ピッピッピッの秒読み、最後の数秒の無音が心臓に悪い…と千葉先生。

渡辺「でも相手が秒読みだと、最後の音の無いところで『(相手が)切れ負けしてくれるんじゃないか?』と期待することもありますよ」
千葉「(笑)
 『何で勝っても勝ちは勝ち』ですね」

以下先手は△4五歩から一旦桂を取らせ、角切り後に飛車を走って後手から銀を取り返します。



手渡し、重ね打ち、そして戦乱の地へ

ここで駒割確認。先手の角金交換。
ここで後手山崎七段がうまいこと指さないとまずいよーという話。


そこで△3七角(68手目)と手渡ししたところで先手残り時間は8分。

渡辺「落ち着くには十分な時間ですね」
千葉「『ご利用は計画的にね☆』…ですね」

しかし優勢とはいえ、6筋の先手玉の頭はスカスカなうえ、後手の飛車から6筋に寄る手があるため、6筋には駒が打ちにくい。
たとえば▲6二銀と飛車取りに打つと、その瞬間に△6三飛と寄られて王手銀取りのドツボ。

渡辺「といって今更玉を引く(パチ)…あ、引いた」

▲7九玉。
現実的な手という評判。


そこで後手は△2七角(70手目)と角の重ね打ち。

渡辺「これはー、だいじょぶですか?」

駒を動かしてみると、▲4七飛から必ず角を一枚取れそう。ただし

渡辺「▲8二角と打つ手がドツボなんですよ」
千葉「△3九飛で(△3七の)馬に紐をつけて…」
渡辺「そこで▲6九歩なら?」
千葉「こう逃げて…」

と、▲8二角で当たっていた飛車を6三に逃がすとその手が先手玉への詰めろ角取りに。

渡辺「これが本当の」
渡辺・千葉「ドツボ」
会場「(笑)」

息が合ってるなあ。
というわけで△3九飛には▲8八玉がいいのでは、という話。


先手はまだ考慮中。
そこで千葉先生から「▲6五桂という手はありませんか?」。
実際に動かしてみて(▲6五桂△6三飛▲5三金△同金▲同桂成△同飛▲4二銀)

渡辺「千葉さん見えますねー!」

NHK杯の宮田橋本戦の終盤でも手が見えていた、と褒める渡辺先生。

渡辺「ただしこの手順は、最初が金なんですよね。最初に金を渡すのは勇気が要りますね」

で、

渡辺「…結局▲4七飛になるんじゃ?(パチ)」

というわけで本譜も▲4七飛(71手目)。
以下△3六角成▲3七飛△同角まで進み、解説では▲8二角という予想でしたが▲8八玉(75手目)と入城。実戦的な手で、手渡しだと渡辺竜王
対する△7五歩(76手目)は、中盤入り口の解説で「いつか突きたいけど突くタイミングを測ってる間に先に▲7六歩と打たれたり突く前に終盤になったりする」と言われていた手。
そこで先手は▲7四歩と飛車先に打ちますが、すぐに△6三飛(78手目)。

渡辺「単に△6三飛と寄るより、△7五歩のぶん、得してますね。
 これは▲64歩ですよね(パチ)っておーっと」

▲66歩(79手目)とここで受ける先手。
「これは山崎さん良くなりました」と渡辺先生。


ここから△7六桂▲同銀△同歩と後手の厳しい攻めが続きます。
そこで先手は▲5一金(83手目)として、5二の銀に当ててきました。次の▲5二金が詰めろ。
後手は自らこの金に近づく△4二玉!

千葉「おおおおお」
渡辺「えーっ大丈夫?そんなに近づいて」
千葉「戦乱の地に赴きますね…

終了。そして笑いと怒り?と感動の?感想戦

▲5二金△同玉(86手目)となって、解説では「どうも先手にはそれほど手がないようだ」という話になっています。
たとえばここで▲75桂には△6六飛と走るのがいい感触、そこで▲6七銀と打つだろうが、それでは先手が負ける…というのが渡辺竜王の第一感。
果たして本譜もまったくそのように進行。
以下後手が寄せ切り、△7七金(98手目)で先手が投了。
会場から拍手。


対局者が上の階から降りてくるまで少しだけまったりタイム。
そして対局者が大盤解説会場に入場。拍手。あらためて解説者も壇上に上がって感想戦開始。


まずは司会の方から対局者に一言ずつ感想をもらいます。
山崎八段は時間がなくなって苦しかった…と語りました。
そして。

司会「惜しくも敗れてしまいましたが、見事な対局を見せてくださいました木村一基八段、いかがだったでしょうか?」
木村「えー、たいへん悔しくてですね、この感情をどこにぶつけていいのかわかりません


以下、やさぐれる木村・いじられる山崎・なだめたりつっこんだりいじったりする渡辺、微妙にまとめない千葉による超面白感想戦が展開。


後手玉の寄りがあるんじゃないか?と検討をする渡辺・山崎。そこでいきなり

木村「…本当に寄るんですか?」
会場「(笑)」
木村「私を慰めようと思って…」
会場「(爆笑)」
山崎「あ、でも寄らないですね
会場「(大爆笑)」


自分だけ秒読みに突入していたときの山崎先生の心境。

山崎「時間がないんで『(先手の時間)早くなくなれー!早くなくなれー!』って」
渡辺「私と同じこと言ってるよ(笑)」


△5二銀が悔しいけどいい手だった、という木村評に全員納得しつつ

山崎「木村先生の駒組みに圧倒されて…」
木村「『どうせ攻めてこない』と見切られてたんじゃないかと思いました」

木村先生の自虐ネタがマジヤベエ…!そしてやたらおもしれえ…!!


感想戦では比較的先手がいい筋も見つかりましたが、それでもやはり厳しい将棋だったようです。


…ありがたいことにyoutubeにそのときの動画を投稿した方がいるので、ぜひご覧になってみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=bidUHgkDtmc(1/4)
以下2〜4はページ内のリンクからどうぞ。




感想戦後は表彰式。
西村専務理事が賞状授与のときに山崎八段の下の名前をつっかえるハプニングがありましたが、だいたいつつがなく終了。
山崎先生のスピーチは若々しい感じでした。いや実際若いんだけど。若手有望株。


さて解散。
お客さんがみんなにこにこして帰っていくのが印象的でした。
会場を出る途中まで、近くにいたスポンサーの偉い方の話し声がちょっとだけ聞こえてきましたが、
「意外に若い人多かったですね」「女性も思ったよりいましたね」
なんて会話があって、まあ自分に直接は関係ないんですが、ちょっと嬉しかったです。



…ということで、山崎先生、優勝おめでとうございました。この勢いで順位戦もがんばってください。
木村先生、残念でしたが、切り替えて王位戦がんばってください。って今日第四戦じゃないか!これから見ます。
解説の渡辺先生と千葉先生お疲れ様でした、楽しい解説ありがとうございました。
関係者の皆様、とても楽しい時間をありがとうございました。



おしまい。

*1:http://www.grantokyo-nt.com/access/index.html

*2:http://d.hatena.ne.jp/retuner640/20090608/1244476568

*3:ということで渡辺竜王の自戦記を皆様、どうぞよろしくお願いします(宣伝)。いや面白いですよコレ…すごく…