『クジラの彼』読了。ベタ甘ラブコメの胸焼けを斜め読みで回避するというソリューションを提案…しない

海の底 (角川文庫) [ 有川 浩 ]』のスピンオフが載っていると聞いて読んだ。

クジラの彼

クジラの彼


自衛隊ブコメ短編集。
すがすがしいくらいにそれ以上でもそれ以下でもなかった(褒め言葉)。


実は自分でも意外なことに、いきなり数ページ挫折しそうになった。
読む前からわかっていたのに「あーうんラブコメだねー」みたいな…なんとも微妙な気分。他のシリーズは普通に読めたのにこれは一体。
おそらく割合の問題で、ラブコメが前面に出るとつらいの、かも、しれない。
しかしここでくじけるのはいかがなものか、というわけでいきなり斜め読みで1話目を終える。…1話目って俺の目当ての『海の底』スピンオフなんだけど…
結論から言うと、読んでよかった。


以下各話感想っぽいもの。

クジラの彼

『海の底』番外編その1。潜水艦乗りとOLの遠距離恋愛。主人公は冬原、の彼女。
上で書いたように微妙だった。まとめると「彼氏が潜水艦乗りだからめったに会えなくてうぜえダメ上司に自分に彼氏いないと思い込まれてストーカーされかけたがちょうど彼氏が仕事から帰ってきて助かった」。
俺の敗因はツカミでこの女性に感心が持てなかったことだと思われる。いや違うな。彼女よりもダメ上司のネタがいろいろ微妙なんだ。

ロールアウト

自衛隊の航空機設計開発を請負うメーカーの女性が主人公。
自衛隊の新型輸送機を作ることになったがクライアントにヒアリングしに行ったら部署ごとに希望がばらばらだったり衝突していたりで頭抱えたでござるの巻。というわけでメーカーも自分らに都合のいい妥協満載仕様を通す気満々でござるの巻」。あるある…。
新型輸送機に密閉式トイレをつけるかどうかを巡って浮き彫りになる各関係者の意識の違いが面白かった。あと異文化を理解するって大事だなあ、とかそういう…ありきたりな感想だけど。でも面白かった。

国防レンアイ

自衛隊Theガッツ。違う。ええと。
“鬼軍曹”と呼ばれる女性自衛官と、彼女の同期にしてパシリ的腐れ縁的男性自衛官の話。主人公は後者。女性の少ない自衛隊内ならよりどりみどり、でも一般人との恋愛は難しい…といわれながら彼女が一般人にこだわる理由は。そして彼女が失恋するたびに愚痴飲みに付き合わされる彼の、断れない(断らない)理由は。
…チャンスは何度もあったはずなのに結局「気の置けない友達」ポジションに落ち着く煮え切らない男の話ってなんか好きなんだよね。って別に俺のことじゃないぞ!俺のことじゃないうるさい黙れあっち行け!!!ハァハァ
というわけで好きな話。

有能な彼女

『海の底』番外編その2。主人公は夏木。
自分はずっと潜水艦の中に居てめったに合えないのに、他人は毎日彼女と職場をともにしている。自分は彼女の笑顔をめったに見れないのに、他人はそれを毎日見る機会がある…というアレコレから不安になる夏木がよい。
アレか?男目線なら大丈夫なのか俺は?

脱柵エレジー

脱走のことを自衛隊では「脱柵」と呼ぶ。で一般人の彼女に会うために寮を脱柵する隊員たちをネタにした話。例によって開始数ページで「あ、今回くっつくのはこいつとこいつか」とわかる親切設計。
恋愛している自分に酔っている人の描写が本当にしっかりイライラできて好印象(伝わるだろうかこの気持ち)。そして歴史は繰り返す…

ファイターパイロットの君

空の中 (角川文庫) [ 有川 浩 ]』のスピンオフらしいんだけど本編読んでないのでとりあえずこの話のみの感想。
自衛隊Theガッツその2。
戦闘機乗りの女性と一般人の男性の恋愛とか結婚とかの話。導入部からすでに面白かった。
航空機馬鹿で恋愛に疎い無骨な彼女が素敵。
あとで空の中読もう。