第22期竜王戦第1局のネット中継を見た。あと藤井九段の話。

http://live.shogi.or.jp/ryuou/(中継サイト)
夕方家に帰ってからまとめて観戦。
竜王戦は二日制で時間がたっぷりあるうえ、スポンサーがお金持ち。なので中継内容も太っ腹。
中継サイトだけで、棋譜再現、その解説コメント、分岐、中継ブログと読みどころがたくさんあり、流して追うだけでもお腹いっぱいになり、つまり視聴者も太っ腹になる。
…上手いこと言おうとしたがダメだなこれは。ああダメだな。


後手渡辺竜王の放った△5五銀の棋譜コメントが臨場感溢れて面白かった。
実際これが好手で、攻めているのは森内九段だけれど、形勢は渡辺寄りという展開。
最後に森内九段にも見せ場はあったものの届かず、渡辺竜王の勝ち。
第2局以降も楽しみ。


本局は立会人を福崎九段、解説を藤井九段が担当。見る人が見れば「絶対面白そう」と思えるメンバー。
で藤井先生公認サイトの鰻屋本舗さん経由で、本局直前にお二人へインタビューした記事があることを知った。
こちら↓
http://seta-express.blogspot.com/2009/10/blog-post_7100.html(福崎九段インタビュー)
http://seta-express.blogspot.com/2009/10/2_14.html(藤井九段インタビュー)
地元の学生さんが書いた記事だそうです。GJです。
ただ福崎先生ご自身への質問はニコ動にあがってる動画のネタだけ。事前取材はあまりされなかったようで…
鰻屋との質問内容の差に全ボンゴファン(俺も含めさせてください)が泣いていい。


その藤井先生の発言は、とても興味深く、これこそまさに記者さんGJという感じだった。
全文が読みどころなので、ぜひ記事本文で内容をご覧ください。


気になったところがひとつだけ。

shu-ji「矢倉で新型藤井システムですか。」

藤井「それは考えていませんけど(笑)でも僕が四間飛車を指さないから、四間飛車をやめちゃうファンの人もいるんですよね。それが悲しいです。」

shu-ji「藤井先生が再び四間飛車を指すまで、僕は四間飛車で頑張りたいと思います。」

藤井「(苦笑)アマチュアの方なら、四間飛車は十分に使える作戦だと思いますよ。」

この前段で、藤井九段は「矢倉を指すのは、やっぱり本格的な将棋を指さないとダメになるから」「矢倉や四間飛車のような将棋を指さないと、B1やA級では通用しないんですよ」という発言をしている。
目先の勝ちだけなら変化球を投げてもいいが、これからも勝ち続けるためには本格的な将棋を指さなければならない。本格的な将棋の一つである四間飛車が厳しいなら、もう一つの本格的な将棋、つまり矢倉を指すしかない…と、藤井九段の話には「勝てるか、勝ちにくいか、そしてこれからもちゃんとした将棋を指していけるか」ということに対する藤井九段なりの理屈、信念が表明されている。
いっぽうで「藤井が指すか、指さないか」で自分の将棋を考えているファンがおり、それが藤井九段にとっては悲しい。
なので、引用の最後の段で記者の「藤井先生が再び四間飛車を指すまで〜」発言に対して藤井九段から(苦笑)と入るのは、「だから(ついさっき言ったとおり!)『藤井が指すかどうか』で考えるのはやめなさいよ。『四間飛車があなたにとって使える作戦かどうか(と、面白い作戦かどうか)』で考えなさい」という感じだったのではないかなーと思う。


こういう感じでこのインタビューから妄想していくと、「あくまで合理的に、本格的に将棋を指そうとしているだけの本人」と「過去の成功体験を引きずって夢を見続けてるファン」みたいな構図も一瞬思い浮かぶ。
もちろん俺の妄想であって、実際はみんな大人だからそういうことではないと思…いや、そういうことでもあるのかなあ。


ひとつ思い出した。
今年の渋谷将棋まつりの深浦王位対藤井九段特別対局の際、解説の豊川七段が
「せっかくだから本家藤井システム見たいですよね、皆さん!」
と会場を煽ったとき、客席全体からものすごい拍手が沸いた。
天下のタイトルホルダーがアウェーという異常な空気。藤井人気恐るべし、と自分も拍手しながら思ったものだ。
そして後手藤井は確かに四間に飛車を振った。またしても拍手が沸いた。
先手が居飛車穴熊模様に指せば、後手もシステム風の駒組みが続く。
これはシステムくるか。しかし後手藤井システムは厳しいって話じゃなかったのか。それでも指すのか。そうか、ファンの期待に応える藤井はさすがだ。
…しかし、結論から言えば藤井システムにはならなかった。
本局は居飛車穴熊対銀冠四間の持久戦になり、結果は深浦勝ち。
局後インタビューで藤井九段がこの戦型を選んだ理由は
「今日は思い切り将棋が指したかった」
だった。そこから「藤井システムはあっという間に終盤になるし、勝っても負けても一方的になりやすいから…」と続いた記憶がある。


ファンの夢が満載の藤井四間飛車は、もしかしたらもうその夢だけが過積載で、藤井には見えている厳しい道のりを進んでいくには、鈍重にすぎるのかなあ…と、ポエミイなことを思った。うん、これはひどい


ちなみにこれが少年漫画だと、
「夢が過積載だ?そりゃあ違うね
 覚えとけ
 振り飛車党の飛車ってのはな
 夢を燃料にして飛ぶんだよ!!!」
みたいなセリフと共に謎の必殺技が出ます。


まとめると、いやまとまらないのだけれど、
それはそれとして俺は藤井九段を応援しています。次の順位戦もがんばってください。


もう一つ。
上でも名前を出した藤井先生公認サイト「鰻屋本舗」にて、藤井先生あての応援メッセージが募集されています。
メッセージが集まったら、管理人さんが責任をもって藤井先生にお届けするそうです。すごいぜ。
藤井先生が好きな人も、藤井って名前が気になるだけの人も、掲示板までどうぞ。
「応援はしたいけど変なこと書いちゃったらどうしよう」と心配な方もいるかもしれませんが、一番ダメな例が管理人さんのすぐ下のレスに載っていますので、それよりマシな文面なら何でも大丈夫です。マシじゃなくても心を込めれば大丈夫です。