第50期王位戦第6局大盤解説会in陣屋に行ってきました

開幕から挑戦者木村八段怒涛の3連勝でタイトル奪取にいきなりの王手。
しかし深浦王位もそこから2連勝と意地を見せて本局。
木村先生の初タイトルの瞬間をこの目で見たく、対局会場である「元湯・陣屋」の現地大盤解説会に行ってきました。


…先に結論から言うと、結果がどうなろうと大盤解説会場に対局者が登場する予定はなかったようです。
ぐぬぬ


中継サイトはこちら。http://www.tokyo-np.co.jp/igo-shogi/50oui/


エントリ中に登場する方の発言等の記述は主に俺のメモと記憶から再構成したものです。
あらかじめご了承ください。
内容について事実と異なる点があればご指摘ください。



会場の話とか

対局場は神奈川県秦野市鶴巻温泉にある高級旅館「元湯・陣屋」。
将棋や囲碁のタイトル戦でも歴史のあるお宿だそうです。
http://www.wone.co.jp/jinya/(公式サイト)

大きな地図で見る
最寄り駅の小田急鶴巻温泉駅。

サイトの交通案内ではここから徒歩4分ということでした。
もりもり歩く。

道の途中に囲碁サロンが。

将棋もできるそうですよ。
そして看板の指す先にそれらしい風景が。

着いたどー。


「アニキ、間違いねえ。やつらはここだ」「よし、踏み込むぞ」(以上脳内トーク

しかし仁王立ちで撮影したのになぜブレているのか。
デジカメの補正機能をもってしてもブレる自分のスーパー撮影技術が恐ろしい。


開会14時に対して13時40分頃到着。
会場内はこんな感じ。

前半分の席が座布団、後ろ半分の席が椅子。
自分より前の人の頭で盤が隠れることが起こりにくいので、この構成は個人的に好きです。
大盤はすでに現局面に。

お客さんがモニタに写されている盤にあわせてどんどん進行させていたようです。
そしてやって来た解説者が初手から解説するためにまた黙々と盤を直すことになる罠。個人的にはデジャヴ。


ちなみに参加費は2000円で、ホットコーヒーやお冷がいただけます。

1杯無料とかではなく、おかわり自由でした。


鈴木八段登場。解説開始。

実は、解説会当日まで「陣屋」の公式サイトでは「解説者未定」でした。…と思ったら今見直しても未定だ。
とにかく、未定だったのです。
まあ本局立会人が鈴木大介八段、副立会人が真田圭一七段とわかっていたので、たぶんそのままお二人が出られるんだろうと予想していましたが、やはりそうなりました。


と、いうわけで会場に鈴木八段登場。
福々しい笑顔が和服姿にやたらよく似合っています。何かご利益がありそうなレベルです。
手には次の一手の賞品と思われる扇子の箱の束を持っていました。

鈴木「なんともう終盤戦で、次の一手問題で正解者がたくさん出る可能性が出てきました(笑)。
 用意してきた賞品が足りないので、こっちに来てる棋士に色紙書いてもらいます。もちろん私も書きます」

太っ腹です。


大盤がいきなり現局面なので、とりあえずそこからの解説になりました。
その現局面とは、深浦王位が大長考した例の▲9八香(63手目)から進んだ66手目△7九馬。
まずは控え室の検討の話。
▲同金に△9八飛成のあと玉がどこへ逃げるか。▲5九玉なら先手負け。よって▲5七玉が最善。
ここで後手から△5五香で玉頭を狙う筋があるが、以下▲5六桂△同香のとき▲同金で大丈夫。
しかし、

鈴木「木村さんなら▲同玉、と取りそうなんですよね(笑)。そういう棋風ですから」

あーわかるわかる的な笑いが起こる会場。木村先生の玉ってマッチョだよね…
しかしこの手は間違いで、取ると先手玉が危なくなる。
とはいえ「そういうことさえなければ、先手が余しているだろう」というのが控え室の見解でした。

鈴木「しかし私は、木村さんはもしかしたら間違えるのではないかと思っています」

「七割くらいの確率で…」という言葉も聞こえましたが、きっと俺の空耳です。


こんな感じで、鈴木先生トークは全体的に歯に衣着せない感じでした。それでいて嫌味な感じがしないのはさすが。



最初からあらためて解説開始。

大盤の駒を初期配置に直して、あらためて初手からの解説。
その間にスタッフさんのほうで棋譜の準備が無く、お客さんからお借りするというちょっとしたハプニングがあったりもしました。


鈴木先生は本局ではじめて立会人をやったそうです。

鈴木「封じ手開封もはじめてで、緊張しましたね。
 封筒の切り方、浅すぎてもだめだし、深すぎて中まで切っちゃってもダメだし…(笑)」


戦型はがっちり相矢倉に。
この戦型は自分も思い出深い、と鈴木先生
15手目▲6九玉で後手の指し手にひとつの分岐があります。

鈴木「もうずいぶん前、深浦先生らが矢倉の研究をするために『矢倉研』という研究会をやってまして。
 私は振り飛車党なんですが、無理矢理潜り込ませてもらっていました。
 で当時この局面をもって、私は△5二金と指したんです。
 そうしたら、それを見た深浦先生に
 『この手は30点』
 と言われました(笑)。
会場「(笑)」
鈴木「深浦先生が言うには、『ここでは△7四歩として急戦をにおわせろ』ということでした。
 …で、本譜は△5二金。
 30点の手でした」

30点の手だといわれた時代から10数年が経っているそうで、少し感慨深そうでした。


両対局者と鈴木先生の関係の話。
深浦王位には昔からよく将棋を教えてもらっていたそうです。ただ鈴木先生には厳しかったとのこと。
その原因を、深浦先生が普段から将棋を熱心に勉強していたのに対し、自分はいつも遊んでいたからだと分析する鈴木先生
にわかファンの自分には謙遜なのか事実なのかはわかりませんが、

鈴木「ドラゴンクエストってゲームがあるんです(という言い方は年配の方への配慮)。
 私は主人公のレベルを上げるのが面白くてでよくやっていたんですが、深浦先生に
 『ゲームのレベルを上げても、君のレベルは上がらないよ!』
 と言われたことがあります」

という話からするに、深浦先生から見て「鈴木は遊ぶ男だ」という印象はあったのかもしれません。
しかしそれにしてもなんという名言…


深浦王位は鈴木先生から見て先輩で「教えてもらう」関係だったのに対し、木村八段とは奨励会の同期。木村先生とはその頃からよく戦って、よく痛い目にあっているそうです。…って鈴木先生が自分で言ってました。
木村先生の話はまたあとで出てきます。



がっぷり四つの本局は、おそらく両者の研究だったのではないかというお話。
しかし研究といっても一人で全部やれるわけではなく、後輩などに「あの手ってどうなの?」と聞いたり調べてもらうことも少なくないそうです。
なので

鈴木「いま、(対局者の)後輩の研究仲間が冷や冷やしながら中継を見てると思います(笑)。」

「チーム木村」や「チーム深浦」みたいな何かを想像しました。
ともあれ、自分たちの研究が先輩対局者の命運を左右するかもしれないわけですから、まあ他人事ではないですよね…。


25手目▲6八角で先手は森下システムへ。
この森下システムは対策としてスズメ刺しが有効とわかり一時衰退したが、深浦王位がそれに対する新対策を編み出し復活した、と鈴木先生の解説。
発案者の森下卓九段と深浦王位はともに故・花村元司九段門下の兄弟弟子で、鈴木先生いわく「森下システムは花村門下の血脈が流れている」。
しかし本局は深浦王位がその森下システムを向こうに回して戦う展開。


31手目▲3五歩は今月号(10月号)将棋世界の木村八段の矢倉講座に載っていた手だそうです。まだ買ってませんすみません。

鈴木「その記事では、この局面で▲3五歩と突いて『これで先手が悪いわけがない』!とまで書いてましたね」

以下△同歩▲同角。ここで焦って△3六歩と打たないのがポイントで、打つと▲4六角から手順に先手に攻めの理想形を作られてしまう。よって後手も手持ちにした一歩を端に使いたい…とかそういう解説がありがたやありがたや。


△7三桂(34手目)の桂跳ねを見て先手は矢倉城に入城。後手は5筋突き捨てから端攻め開始。
△九六歩▲同歩△9七歩(40手目)。

鈴木「この局面を私は連盟の控え室で見てまして、ここで『▲8六銀はどう?』って、確か北浜七段に言ったんですが
 『出たら新手ですね』
 とだけ言われまして、つまり私の手はよくないらしいです(笑)」
会場「(笑)」

本譜は▲9七同香で新手ならず。
そして△8五桂から端攻め継続。この桂を先手の香と交換し、9三に打ち込んで二段ロケット完成。

鈴木「ここで一番やっちゃいけない手がありまして、それは何かというと端を受けることです。
 部分的には端を破られているので、駒を端に集めたりして下手に受けると被害が拡大するんです。
 こういうときは端は見捨てて、そのかわりに別の手を考えたほうがいいですね」

そこで▲5四歩(47手目)がのちの拠点をみたよい軽手。
ちなみに鈴木先生振り飛車党の習性で、すぐ飛車を5筋に回してタテに使いたくなるそうです。しかし本局では飛車がヨコによく効いている駒なので、このまま受けに使うのがいい。それに5筋に飛車を動かすと玉飛が接近して何かのときに危ない。…という解説でした。


後手は△9六香(48手目)と走ってきました。

鈴木「私はこの局面なら当たり前の手だと思っていたら、控え室では『この手はすごい!』と大反響でしたね。
 なんでって聞いたら『この局面で香を走る人はいない!』だそうです」

自慢か?自慢なのか?


一直線に香と銀の交換ののち▲4六角△9二飛(52手目)。
鈴木先生はこの△9二飛を「強気の手」と評しながら、後手玉が入城していないことを気にしていました。角金銀がカベになっているせいで、何かの拍子で簡単に詰んでしまいます。しかも次に自陣に敵の角成が来ることが見えています。
もちろん入城を保留して戦うほうがいいこともありますが、

鈴木「私の指導対局でアマの方が後手を持っていたら、感想戦で『なるべく入城してから戦ったほうがいいですよ』ってアドバイスしてますね(笑)」


そして▲9三歩△同飛と飛車のヨコ利きをずらして▲8二角成(55手目)。
ここで封じ手
昔は二日制対局の一日目でここまで進めることはまずしなかったそうです。
それにしても本局は一気に進んだせいで、ゆうべの食事会ではこの将棋の話はあまりなかったそうです。

鈴木「ここまで進むと、棋士の間でも『どっちかがよくなってるはず』という感じになるんですよ。
 そうすると関係者はしゃべりにくいんですよね…」

タイミングが難しいぞ。次の一手問題編。

この頃、会場に設置されていた盤上モニタにようやく動きがありました。
オープニングで解説されていた▲5七玉にやはり△5五香▲5六桂△同香(72手目)。

鈴木「ここで▲同玉が木村さんの手。でもそれが悪手なんです」

どんだけ木村先生に悪手を指させたいんですか大ちゃん。
しかし本譜は冷静に▲同金(73手目)。


もどって封じ手後の話。
封じ手の△9八香成(56手目)に、「この手を封じ手にするなら、1日目に指したほうがよかったのでは」と鈴木先生

鈴木「そしたら一晩中先手に王手かかってたのに

盲点でした。


以下先手玉が逃げてー後手飛車も逃げてーお互い駒を取り合ってー、そして△9三角成(62手目)と成り込みながらカベ解消。
ここで▲9八香(93手目)に「これがすばらしい一手でしたね」と鈴木先生
消費時間からするに、おそらくその直前まで後手の研究どおりに進んでいた。ところがこの一手のあと後手は2時間以上の大長考。つまりこの手に誤算があったのだろう…というお話。


△8七竜(74手目)の現局面に追いつきました。
鈴木先生は「じゃあそろそろここで次の一手を出しましょう」と候補手を挙げはじめるものの、問題がそろう前にさくっと▲4八玉(75手目)。
出題タイミングが難しい。かといってもう先延ばしも難しい局面です。
幸い後手が△7九成香(76手目)でいったん手を渡したので、ここで盤上モニタを消して次の一手タイム。
候補手は①5二銀②5三不成③その他。
お客さんが回答を用紙に書いている間、鈴木先生はその場で賞品用に色紙を書いていました。


例によって以下の文章もこんな調子でだらだら続くので、この辺で陣屋の風景も少し載せておきます。



本当にいい感じのところですよー。



「答えはCMのあと!」って偉いんだなあ。次の一手解答編。

で…
お客さんが配られた用紙(コピー用紙とかじゃなく和紙でした)に解答を書いている間も、鈴木先生は候補手の解説をしてくれました。


▲5二銀〜▲5三歩成から果敢に攻める筋をざっとやってみると、どうも後手玉に必至をかけることができるようです。
しかしその瞬間に後手に手番が回り、そのうえ後手に持ち駒が多い。
ここで鈴木先生

鈴木「私も最近詰め将棋をやるようになりまして…」

と言い出しました。
強くなるために詰め将棋は大事だと気づいたそうです。
さすが鈴木先生「詰め将棋解くと眠くなる」とか冗談でも怖いことを言い出すどこかの矢倉も指す振り飛車党にも言ってやってください。


で、後手の手番になったのでさあ先手玉は詰むでしょうかとざくざく進めてみると…

鈴木「詰みますね。いやーやるもんですね」

やるもんですね!(プロに向かって)
というわけでこの手の先は危険度満点、踏み込めば確実にどちらかが死ぬルート。
対して単に▲5三歩成ならもう一回山がありそうだ、そうです。


まあ普段の木村八段なら▲5三歩成なんじゃないかなーとかそんな話の流れで木村先生の話題。

鈴木「木村さんは受けが巧いんですよね。
 受けは十一段、攻めは四〜五段で間を取って八段。うまくできていますね」

…。
「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」「俺のログには何もないな」(以上俺の脳内会話)
ほんと遠慮ねえなハチワン師匠。


ともあれ引き続き検討。するとなんだかいい手がたくさん見えた、ような気がしてきましたが、

鈴木「自分と自分がやるといい勝負ですね。
 これで将棋が弱いからしょうがない(笑)」

……。
「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」「俺のログには何もないな」(以上俺の脳内会話)
自虐も容赦ねえなハチワン師匠。


別の変化を調べているうちに、後手玉に詰みがありそうだ、という場面がまた出てきました。

鈴木「ここはかっこいいところを見せたいですね(キリッ」

おお、なんか言った。
大ちゃんのかっこいい詰み手順にお客さんの…とりあえず少なくとも俺の…期待は高まります。

鈴木「あれ?あれあれ?」


…詰みませんでした。

鈴木「今日は日が悪い

キリッ。
笑いに包まれる会場。
お笑い的には「かっこいいところを見せたい」が前フリというかフラグだったというか。


と、鈴木先生はあれこれ話してくださいましたが、手番の先手木村はいまだ思考中。
なのでなかなか次の一手解答にいけません。
とりあえず「正確に指せば先手が勝つだろう」「先手は玉形の関係で『負けたくない手』が指せない→長期戦になったら先手不利」ということから、やはり▲5二銀で攻め合いだろうという鈴木解説。


鈴木先生いわく、こういう場面は棋風が出るそうです。
たとえば深浦先生ならひたすら手を読むそうです。
ちなみに鈴木先生は読んでるうちに「自分が読めないことがわかる」ので、読むのをあきらめて(勝ちやすい)率を選ぶそうです。
また自分が危ない場面でも、受け方を考える前に「あれとあれがあったら相手が詰むなあ」といったことを先に考えるそうです。
ご自分でも「私は楽観派ですから」とおっしゃっていました。


まだ木村長考。もう1時間近い。

鈴木「対局室に行って『お前ら考えすぎ!』って言ってやりたいですね」
会場「(笑)」
鈴木「でも、二人のほうが年上なので…(笑)」


なし崩し的にお客さんから質問タイム。
その質問に答えている間に後手のいい手(△4九銀)が見つかりました。で、この手は別の筋でも使えることが判明。
別の手を考えていたら他の筋がわかる、ということはよくあるそうです。


そしてようやくモニタの盤上に動きがありました。
正解は▲5二銀(77手目)。
30人くらい正解があったそうです。


この▲5二銀のあと△3一玉▲5三歩成(または▲4三銀成△同金▲5三歩成)には検討で見た△4九銀の筋(▲同玉と取れば△4七竜から詰み)がありますが、先手には何か対策があるのか、見落としなのか。
ちなみに△4九銀には▲5九金でどうか、と鈴木先生の検討。ただし金をここに打つのはちょっと…という雰囲気。



真田七段登場。そして佐藤義則八段登場。

↑と、見出しには書きましたが申し訳ありません、この項目はあまり中身がないです。
というのもこのお二人が解説している時間は長考&盤上検討タイムが多く、しかもお二人が検討に没頭してあれこれやっている時間が相当長かったので、メモにも記憶にも拾いきれていません。だってオラ低級だから…


閑話休題
そうこうしてるうちに真田七段が会場に姿を現しました。

鈴木「どうなの、上は?」
真田「いや大変ですよ」

とりあえず現局面の控え室の検討を披露してもらうと、△4九銀には▲5九金ではなく歩。
そこで△3八歩▲3六銀でどうか。
難しいですねーと言い合う人々。


とりあえず鈴木先生から、次の一手正解者多数につき真田先生にも色紙のお願いが。
壇上の脇の席で黙々と色紙を書く真田先生。


真田先生が色紙に取り掛かっている間、鈴木先生は場つなぎトーク

客「先生、そろそろ対局室に行ったほうがいいんじゃありませんか?(※正立会人なので)」
鈴木「私正座苦手なんですよ(笑)
 あと、私が今行ったら、なんか決着がついたみたいな雰囲気になるじゃないですか(笑)」

対局者にプレッシャーですね。


ここで正式に選手交代。
真田先生が解説者になりました。鈴木先生お疲れ様でした。


真田先生は「鈴木先生の解説とかぶるかもしれませんが…」と言いながら、端攻めのあたりからポイントのおさらいをしてくれました。実際には△8六飛の意味など鈴木解説ではなかった筋の解説もあって、いい感じに補完しあっていたと思います。
あと流れとは関係ありませんが真田先生のボイスが太くてたくましくてすごくよかったです。


ここで佐藤八段も控え室から大盤解説会場入り。
開口一番、

佐藤「機械が妙手を見つけまして…」

将棋界では将棋ソフトのことをたまに「機械が…」と表現しますよね。


ともあれ、それが△4九銀にかわる、プロ棋士にも盲点のいい手だったんだそうです。
いい手なのでこれを次の一手問題にしましょうか、と佐藤先生。
さすがにそれはどうでしょう、と真田先生。
と言ってる間にモニタ上では△4九銀(82手目)が指されてしまったので、さっさとネタをばらすことになりました。
その将棋ソフトが出した手は△6七銀。

真田「これは…たしかに地味ですが受けづらいですね。盲点でした」

うなる真田先生。


本譜は▲5九歩(83手目)と控え室検討通り。
この辺からここからしばらく検討タイムでした。
お客さんにも一時離席が目立つようになり、自分も一応がんばって見ましたが、解説が入らないのでちょっと追いつけず…。


解説者二人は▲5九歩に対して△3八歩以下の流れを検討。
そこでお客さんから「▲2五角という手はどうですか?」と指摘され「有力だと思います」と真田先生。
しかしやってみると、有力だけどむしろ負けの変化に。
思い返してみると、これフラグでした。


△3八歩(84手目)。

真田「という手ははるか前にわかっているので、これを指すのに時間を使ったということは手を読みきった可能性があります」


再び検討タイム。お客さんのコーヒーやお冷のおかわりも進みます。


そして先手木村の指した手は▲2五角(85手目)。
誰かが「あれ、打っちゃった?」と声を出しました。すでにまずい変化が出ていた手です。


検討タイム。お客さんから鬼手の指摘があったりして少し盛り上がりました。
たしか△7八竜▲5八香△同銀成▲同歩△4九玉▲5七玉△8七竜▲6七銀のとき、△34桂のような手なら「▲8八金」がその鬼手、だった気がします(うろ覚えですみません)。


本譜は△7八竜から着々と検討の手順。後手は4三の金が効いていて、先手が上部から攻めたり上部に逃げたりするのが難しくなっています。

佐藤「と金で(相手陣の金銀を)バラす手をやってみたかったなあ」
真田「そうですねえ」

そして▲5七玉△8七竜▲6七銀と進み、

真田「(もし△3四桂なら)▲8八金の鬼手が炸裂したら…!」

しかし本譜は△2八銀成で飛車が取られてしまいました。

佐藤「常識的にいい手だったね」

そこで▲3二金〜とついに相手陣をバラしに行きましたが、さっきと条件が違うので効果は怪しい。
とはいえ後手玉を2二に追い込んでから▲5五金と進むと、

佐藤「後手勝ちだろうけど、先手詰ますのは大変だよ」

真田先生はここでとりあえず△5四香が見えたと言いながら、しかし△3五飛なんじゃないかという予想。

佐藤「今の人はこういう、友達をなくす手って呼んだりしてますが、これをよく指すんですよ」
真田「丸山九段とかそうですね」

そして本譜もその通りに。

真田「深浦さんもこういう手好きなんですよね…」


以下、先手にも逃げる手段はいろいろあり、簡単には勝てなそうだと言われつつ、といってやはり逆転することもなく、130手目で木村八段投了になりました。
深浦王位おめでとうございます。
解説者と対局者に拍手が贈られ解説会は終了。
難解すぎる終盤で燃え尽き(てぐったりした)感があり、最後はまったりムードの中解散となりました。
まさかの三連勝三連敗で、初タイトルへの生みの苦しみこれほどか、という感じでした。
しかし次回も応援します木村先生。もちろん深浦先生防衛でも恨みっこなしです。


陣屋さんはとにかくいい環境でした。
水と緑の美景に囲まれた会場で、のんびりしたスタイルでコーヒーを飲みながら、プロ棋士の解説が見れて、十分楽しませていただきました。
長丁場で検討シーンがダレ気味だったことだけが残念でした。離席は自由でしたが、主催者のほうで適宜休憩タイムをとっていただけると、よりよかったかもしれません。


ともあれ堪能しました。ありがとうございました。



おしまい。