大和証券杯ネット将棋・最強戦山崎鈴木戦を見る。

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いつものように2ちゃんねるチェス・将棋板の該当スレを併用。


漫画読みには「ハチワン師匠」でお馴染み、振り飛車党の強豪・鈴木大介八段対、若手の居飛車実力派なのに2ちゃん・ニコ厨的には「矢内さんを諦めそうになったけど諦めて欲しくない人」な扱いの山崎隆之七段の一戦。
解説は塚田泰明九段。
俺は振る人なので鈴木八段側から見ていました。


▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角。
この後手の四手目3三角を見て
「最近出した本の宣伝キター!」
と沸くスレ住人一同。やっぱりみんな同じこと思ったんだね…

角交換振り飛車 基礎編 (最強将棋21)

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ところが角交換の後△3三桂〜△4四角と打ち、▲8八角を見てから後手が選択したのは思いっきり居飛車戦。おい馬鹿やめろ早くもこの棋戦は終了ですね(ブロントさん風に)
振り飛車党の居飛車戦は珍しくなくなってきたそうですが(先日の王座戦での藤井高崎戦も角換わり腰掛け銀だったそうです)、鈴木八段の居飛車はやっぱり珍しいそうです。


両者壁銀のまま早くも駒が衝突。
お互いに一歩を持ち合って第二次駒組みに入りました。
先手は7七の角を解消して矢倉に、後手は3一の銀を2二から盛り上げて銀冠にもっていきたい。
しかし後手銀冠は△2二銀の瞬間に▲2五歩が入ったため中止。
それでも先手の壁銀が解消されたわけではなく、といって先手から7七の角を自分から交換しに行くのはちょっと嫌。
で恐らく「お前さっさと交換してこいやこのチキン」「うっせーばーかお前から来いよ氏ね」そういうやり取りがお互いの内心であったに違いありませんが、結局先手が自分から角交換しました。
しかしその間に後手は6二飛と回っており、5四銀・6五歩との連携がなかなかいい感じ。
そのうえ▲7七銀と上がって先手が壁銀を解消した直後に△8二角と打つと、気がついたら左右反対の振り飛車みたいになってました。
さすが振り飛車党。もちろん偶然ですが。


ところが、後手の8二角の利きを生かした銀ぶつけに対して、先手は9五角!
感想戦でも山崎七段曰く「勝負手」だったそうです。
低級者の自分には???でしたが、局面が進んでみるとたしかにすごい手でした。
△7一飛と引かせたところに▲7二銀として後手の飛車を囲いの奥に追いやり、その後お互い角を取り合ってみると次に▲6四歩と打ち込む手があり、次に▲6三歩成が実現するとさっき打った7二銀の紐がついてて痛い強い。
このと金は5三に寄って来る気満々なので後手も受けなければならない。


というわけで後手は当たりそうな金を一旦引き、玉を3一〜2一と潜ったものの、ここから一転して攻めに向かいました。
△8四歩▲同歩△8三歩といやみをつけて、スレでは
「やっぱりプロはこういう劣勢でもいやみのつけかたがうめーなー」
などとのんびりしたことを言っていましたが、後手から駒がどんどん打ち込まれてあれよあれよという間に気がついたら流れは鈴木ペース。
逆転か?と沸き立つスレ。


が、結論から言えば後手に悪手が出て再逆転しました。


…ここは低級者の俺にはいろいろ思うところがあったのでメモ的にまとめておきます。
この悪手が出る直前の状況を簡単に整理すると

  1. 後手玉は先手の馬筋にいた。玉の前には金が一枚守りについている
  2. 先手玉は後手の馬筋にいたが、王の前に守りの金が一枚ついており、その金は馬に当たっている

つまり先手側から見れば、先手はいつでも後手の馬を取ることができるし、後手玉にいつでも王手をかけることができる状況にありました。
ここで後手は7三桂と跳ねて先手の馬に狙いをつけたのですが、これが悪手の烙印を押されることになりました。
すなわち

  1. 先手のターン!桂は無視。馬で攻撃。金を取って後手玉に王手。次の後手のターンに強制イベント発生するからよろしく。先手のターン終了。
  2. 後手のターン!先手が王手したので強制イベント発生。糞が。王手で切り込んできた馬を取る。取ったら手番終わり。糞が。後手のターン終了。
  3. 先手のターン!金で後手の馬を取る。まわりに誰もいねーからタダで取れちゃったよwてか馬取った手が今度は相手の銀のケツに当たってるよwwwwwwまじやべぇwww。先手のターン終了(キリッ。

…という感じで、後手は守りの要の金をはがされるわ、攻めの要の馬をタダで取られるわ、挙句後手最後の望みの綱の銀も返す刀で取られるわで駒損以上の大損害になりました。


それから数手で後手投了。
山崎七段の勝ちになりました。


感想戦は対局者の意見感想がストレートに出たため(特に鈴木八段)チャット画面もスレもまた盛り上がりました。
鈴木八段サイドの発言を拾うと、
四手目3三角はやっぱり本を出したからやろうと思っていた作戦だった、とか。
居飛車やらんからよくわからなかった、とか。
▲9五角は一瞬クリックミス(笑)だと思っていた、とか。
△7三桂の代わりに△3六馬とする手が当時見えてなかった、とか(たしか残り時間わずかか、1分将棋だった気がします)。
だいたいそんな感じ。
また勝敗はつきましたが、その時その時の形勢判断、大局観についてお互いに譲らないがまた強いなと思いました。

塚田泰明 > 59手目にと金を作ったあたりは
塚田泰明 > 先手優勢ということでよろしいのでしょうか。
山崎隆之 > ここは少し指せると思いました。
鈴木大介 > ほぉ〜、びっくりです。こちらが良いと思ってました。
塚田泰明 > そうなんですか!

圧巻は66手目△8七歩(攻め込まれていた後手が先手陣にいやみをつけはじめたあたり)のあたり。

塚田泰明 > 大変な局面なのですね。
鈴木大介 > こちらは少し良いと思っていました。
山崎隆之 > そうですね。大局観がおかしかったですか。
山崎隆之 > こちらもいいと思ってました。
塚田泰明 > 私は大変だと思います。

張り合う人々。解説者も譲らない。
まあそれはそれとして86手目△7三桂は全員一致。

塚田泰明 > 実戦は再び先手駒得になり、
鈴木大介 > ▲3二馬で待ったをしたくなりました。
山崎隆之 > 72の銀が落ちてるのはうっかりしたので、焦ってました。
塚田泰明 > はっきりしたかと思いました。
山崎隆之 > はい、ノータイムでいかせていただきました。
鈴木大介 > 泣きました。

うう。


自分の感想としては、振り飛車党が指す四手目3三角からの居飛車が見れて、それだけでもとても面白かったです。勉強になりました。
また逆転再逆転の流れも視聴者的に盛り上がったので棋譜の善悪はどうあれそれも面白かったです…振り飛車負けましたが…いや今回は居飛車か…。


次回6月7日は久保利明棋王谷川浩司九段です。ってこの回もすげえ!
楽しみです。